低温を綴じて、なおさないで
「……こういうこと、はじめてした日。栞が泣いてた、高校時代のあの日のこと」
“あの日のこと”。わたしがさっき思い浮かべた日のことと同じ日を指している。
直に宛てられた手紙を見つけてしまって苦しくなった。心が真っ黒になって、その黒がかった醜さをそのままぶつけてしまった。
彼女がいることも、当たり前に元カノという存在が大勢いることも、その元カノからもらった手紙のひとつやふたつあることくらいおかしくないのに、閉じ込めていた黒がわたしだけじゃ抑えられなかった。そんなあの日のことだ。
わたしが泣く権利も直を求める権利もなかった、ただの幼なじみだったのに。
「ごめん。俺馬鹿だから、あのときのこと、なんで栞があんなふうになったのかまだわかってない。栞がどうしたら泣き止んでくれるのか、どれだけやさしくしたら笑ってくれるのか、必死で」
覗き込めば、綺麗で整った顔がくるしそうに歪んでいた。そんな表情をさせてごめんね。
もしかして、あの時からわたしをすきでいてくれてたのかな。
だとしたら結構わたし、最低かもしれない。それは、それでもずっと彼女が途切れなかった直にも当てはまるのかもしれないけれど。