低温を綴じて、なおさないで
「花火、楽しみにしてる」
「わたしも」
きれいなその顔で、もう一度口角を上げ直してから、手をひらひらさせてわたしの前から去ろうとした。
……のを、一旦やめて、またわたしに目を合わせて、深い黒の双眸がわたしをとらえた。
そうして一瞬だけ、わたしの耳元に顔を近づけて、直接鼓膜を揺らされた。
耳にかかった吐息、息とともに吹き込まれた囁きに、なにも反応できなかった。
──「俺と話してるとき、ほかの男のこと考えるの禁止ね」