恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「はい。大人なのに情けないですよね。仕事の時ならもう少し気丈でいられるんですが、休日に雷が来ちゃうと、もう全然だめで……」
「そんな話を聞いたら、余計にひとりにさせられない。男を部屋に上げることに抵抗があるのはわかるけど、神崎さんを余計に怖がらせることはしないって約束する。これも、お隣さん同士の助け合いの一環だ」
「真城さん……」
私が気を遣わないよう、あえてそういう言い方をしてくれているのだろう。
決して真城さんを警戒していたわけではないが、彼の誠意が伝わってくる。
握られたままの手はすっかり震えがおさまっていたけれど、真城さんの温もりを手放すのが惜しい。そんな感情も生まれていた。
「じゃあ、雷が止むまでの間だけ……」
彼を引き留めたいという本心は明かせるはずもなく、遠慮がちに告げる。
真城さんは優しく目を細め、ただ黙って頷いた。
「そっか。それで雷が苦手に……」
「はい。もうずいぶん昔のことなのに、軽いトラウマになっているみたいで」
濡れた服を着替えて買ってきたものの整理も済むと、リビングで温かいコーヒーを飲みながら、真城さんに子どもの頃の話をした。