恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「無理に克服する必要はないと思うけど……やっぱり〝雷は怖くない〟って体験を地道に積み重ねていくのがいいんじゃないかな。神崎さんの場合、怖い時にひとりぼっちだったっていうのがよくなさそうだから、こうして誰かと話して気を紛らわせるのはきっと有効だよ」
「そうですね……。確かに、ひとりで布団にくるまっている時はいくら音を遮断していても怖いですけど、今は音が聞こえているにもかかわらず、ある程度耐えられていますし」

 雷は予告なく鳴るのでどうしてもビクッと反応してしまうけれど、隣に真城さんがいて、手の中には温かいコーヒーのマグカップがある。

 その平和な空気が心を落ち着かせてくれている気がする。

「ちなみにテレビをつけるのはどう? ひとりでいても、誰かが喋っているのが聞こえて安心しない?」
「それ、試したことあるんですけど……。停電になった時、照明と一緒にブツッと切れてしまうのが逆に恐怖をあおるのでダメでした」
「そうか。落雷による停電もあるか……」

 真城さんは腕組みをして天井を睨む。私のトラウマ克服について真剣に悩んでくれているようだ。

 一緒にいてくれるだけでありがたいのに、どこまで優しい人なんだろう。

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