恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「俺が開けても大丈夫?」
「お、お願いします……」
真城さんはゆっくりドアを開けると、私の背を押して中に促してくれる。
私はホッと息をつくと、ゴミ袋の件をなんとか思い出す。
「ちょっと待ってくださいね、今、袋を――」
「神崎さん。俺、もう少し一緒にいようか?」
真城さんを玄関に残し、リビングダイニングに向かおうとした瞬間、彼がそう言って私の手首を軽く掴んだ。
「えっ……」
「このままひとりにするのは心配すぎる。手、まだ震えてるし」
手首を掴んでいた彼の手が指先の方へ移動し、包み込むようにギュッと握られた。
じわじわと伝わってくる彼の体温に、心が揺れる。
しかし、さすがにこれ以上彼の時間を奪うわけにはいかない。
「そこまでご迷惑をかけられません……。雷も一晩中ってわけじゃないでしょうから、止むまでイヤホンをして布団にくるまっていればやり過ごせますから」
「布団って……いつもそうしてるの?」
真城さんが驚いたように目を瞬かせる。
そうだよね。怖いものから身を守る方法が、この年になっても〝布団をかぶる〟だなんて……いつまでも子どもみたいな自分には、私だって辟易している。