恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
もっと早く知りたかった……なんて思っても後の祭り。
それに、私のことを強いとかたくましいとか言う男性は彼が初めてじゃなかったから、彼だけが悪いわけじゃないのだ。
甘え下手でなんでもひとりでこなし、ハグやキスなどの甘いスキンシップに対して大した反応もできず、時には逃げるようなそぶりさえ見せるこんな女、誰が愛してくれると言うのだろう――。
「神崎さん?」
真城さんに呼び掛けられてハッとする。停電にまつわる苦い思い出を辿っているうちに、自分のコンプレックスに飲み込まれそうになって上の空だった。
「す、すみません。なんの話でしたっけ?」
コーヒーをテーブルに置き、真城さんの方へ顔を向ける。彼は申し訳なさそうに苦笑した。
「いや、大した話じゃないんだ。結局、信頼できる相手と一緒にいるのが一番安心だろうっていう当然の結論しか導き出せなくて、謝ろうとしてただけ。ただ……」
「ただ?」
「その相手が俺なら、どんなにいいかって思う」
彼のまっすぐな視線と言葉が、心に飛び込んでくる。
これまでの失敗で、女性としての自信も恋愛に対する情熱も、ほとんど失ったと思っていたのに……この胸はどうして、懲りずに熱くなるんだろう。
学習するということを知らないの?