恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
連休中に届いたメールをチェックし、優先順位の高いものから返信する。その中に、何度となく営業をかけている和食レストランからの好意的なメールがあり、月曜日特有の軽い憂鬱が吹き飛んだ。
先ほど真城さんたちも話していたが、パンドラパントリーが扱う主力商品のひとつにはワインがある。
価格も質も世界各地でずいぶん異なるが、国内営業部で私がリーダーを務めるワインプロジェクトのチームでは、甲州をはじめとする日本産ワインを厳選して仕入れ、レストランやバー、ワイン専門店などに販売している。
メールをくれたのは和食とワインのペアリングを売りにしている人気店で、料理長は少し気難しい男性なのだが、しつこく足を運んだ甲斐があったようだ。
実際に購入するかどうかはまだわからないが、改めてうちが仕入れたワインを試飲したいという依頼のメールだった。
ワインを何本も持参することになるから、誰かに同行してもらった方がいいだろう。
パソコンから視線を上げてオフィス内を見渡し、チームメンバーの姿を探す。すると、ちょうどひとりの同僚と目が合った。
一瞬だけ躊躇ったものの、覚悟を決めて立ち上がる。
「針ヶ谷さん、少しいいですか?」
「なに? 忙しいんだけど」
迷惑そうなそぶりを隠そうともしないのは、私の二年先輩で真城さんと同期の針ヶ谷仁。私に〝たくましい女コンプレックス〟を植え付けた、元恋人だ。
『忙しい』と言いつつ、スラックスのポケットにサッとしまったスマホは明らかにゲームの画面だった。指摘するのも面倒で、見なかったことにする。