恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 幼かった学生時代ならまだしも、大人になってまでその関係が続いていると言うのは予想外である。

 そもそも、ふたりのケンカの発端はいつもくだらないこと。

 そのたびに彼らをなだめ、仲直りのきっかけを作り、結局元通りになるふたりを見守ってきた。

 だから今回も、何度か俺のもとを訪れた那美に話を聞き、『俺じゃなくてアイツと話せ』と言い聞かせ、翔真には【いいかげん那美と仲直りをしろ】とメッセージを残した。

 友人の役割としてはそれで十分だと思うのだが、今回はどうも彼らの間に走った亀裂が深いらしく、那美も翔真も意地になっているらしい。

 本当は俺だって人の恋愛の世話をしている場合じゃないのに、まったくいい迷惑である。

【明後日だけど、到着は夜になるからすぐには会えない】
【それでも待ってる。今回ばかりは翔真のこと許せないから、昴矢と浮気しちゃうからねって宣言してあるの!】
【八つ当たりに俺の名前を使うのはいい加減にやめろ。本気で誤解されたらどうするんだ】
【いいもん、別に】

 そこまでやり取りをしたところで、ホテルのデスクに置いていた腕時計で時間を見る。

 今日は朝からニルセンさんのところを訪れる予定なのだ。神崎さんも気合いを入れているだろうし、友人の痴話げんかに付き合っている場合ではない。

< 139 / 199 >

この作品をシェア

pagetop