恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
【もう時間がないから仕事に行く。とにかく出張が終わったら連絡するからそれまで待つか、たまには自分たちで話し合って解決してくれ】
既読がついたかどうかも見ずに、メッセージアプリを閉じる。
スマホを置いてなにげなく髪に触れるとどうやら寝ぐせがついているようで、これで神崎さんの前に出るわけにはいかないと、慌てて洗面所へ駆け込んだ。
コペンハーゲンから110キロ離れたシェラン島西岸の都市、カロンボー。
岬には灯台があり、大聖堂などの歴史的建造物や美術館なども多く立ち並ぶ街並みはとても美しい。
デンマークといえば酪農が盛んというイメージだが、自然豊かな土地を生かし、農園と一体になったワイナリーを営む労働者も多いそうだ。
ニルセンさんもそのひとりで、妻のアンナさんとワイナリーを共同経営している。
タクシーで移動する間、俺は周囲の広大なブドウ畑の緑を興味深く眺めていたが、神崎さんはぎりぎりまでタブレットで資料を読み込んでいる。
耳を澄ませると、彼女は小さく口を動かして英語のフレーズを呟いていた。