恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
俺たちは笑顔で挨拶と握手を交わすと、ニルセンさんがさっそく畑の方へ案内してくれると言う。
神崎さんと一緒に彼の後に続こうとしたら、アンナさんが彼女を呼び止めた。
「神崎さんはここに残ってちょうだい。私と一緒に別の仕事をしましょう」
「別のお仕事、ですか?」
意外な展開に、俺と神崎さんは目を見合わせる。この事務所は醸造施設とも繋がっているので、そちらを見せてもらえるのだろうか。
「ええ。ふたりには、別々にちょっとした試験を受けてもらおうと思っているの」
「試験……?」
と、いうことは。その試験に合格しなければ、俺たちの会社にワインを納品してもらえない……?
アンナさんがニルセンさんと目配せを交わすと、彼も同意するように頷く。
どうやら、夫婦で話し合って決めたことのようだ。
「どうしましょう、真城さん」
神崎さんが日本語で不安げに尋ねて来る。俺は畑の方へ連れていかれるから、彼女を助けることはできない。アンナさんがどんな試験を課してくるのかも不明だ。
「さあ、真城さんはこちらへ」
戸惑う俺たちを引き離すかのごとく、ニルセンさんが俺を外へと促す。想定外の事態だが、ここは自分たちを信じるしかない。