恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
しかし、やはり出張の疲れがあったのだろう。それほど本気で走ったわけではなかったのに、息が切れるのがいつもより早かった。
通りかかった運動公園に入ると、海の見えるベンチに腰を下ろす。
私以外に人がいる気配はなく、とても静かだ。対岸の夜景がとても綺麗で、呼吸を整えながらただぼうっと眺める。
さて、これで気持ちもすっきりリセットできた。そのために今のマンションに引っ越してきたんだもん。明日からまた自由気ままなおひとり様生活を謳歌しつつ、仕事頑張ろう――っと。
「……って、さすがに無理……」
ベンチに座ったまま、がくっと首をうなだれる。
気分転換に来たはずなのに、体も心も重くなるばかり。結局疲労が増しただけだ。
昴矢さんがここにいたら、無理するなって叱られるかな。お説教の後はマンションまでおぶってくれるかもしれない。
いつだって私よりも私のことを心配し、守ってくれる人だから。
そんな昴矢さんだから、こんなにも――。
切なさに胸が押しつぶされ背負う担っていたその時、ふいに、バッグの中でスマホが鳴った。取り出してみると、昴矢さんからの着信だった。
名前を見ただけで涙ぐんでしまい、彼が自分の中でどれほど大きな存在なのかを思い知る。
強がって意地を張るのは、もうやめたい。