恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「……はい」
『志乃。今どこ? 部屋のチャイムを押しても出ないから……』

 ……一度会いに来てくれたんだ。

 那美さんとの話はそんなに長引かなかったらしい。こんなことなら大人しく家にいればよかった。

「すみません、今、走りにきてて……」
『えっ? あんなに疲れてたのに?』
「はい。……ホントバカですよね。当たり前ですけど途中でバテちゃって、今、公園でひと休みしているところです」

 話しながら、先ほど滲んでしまった涙を拭う。昴矢さんの声を聞いていると、不思議と心が落ち着いた。

『じゃあ迎えに行くよ。歩けないならおぶったっていいし』

 思わず、ふふっと笑いが漏れた。昴矢さんは、やっぱり昴矢さんだ。

『えっ。なんで笑うの』
「だって、あまりにも昴矢さんが私の想像していた通りのことを言うので」
『つまらない男ってこと?』
「違います! けど……この続きはきちんと顔を見て言わせてください」

 勇気を出して、そう告げる。

 昴矢さんも私の真剣なトーンを察してくれたのか、静かに『わかった』と言った。

 それから公園の名を伝えると、一旦通話が切れる。

 先ほど感じていた苦しいほどの切なさが、今は胸の高鳴りに変わっていた。

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