恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 マンションから公園までは歩いたら十五分はかかると思うのだけれど、昴矢さんは十分もかからないうちにやってきた。

 出張から帰って来た時と同じ、シャツにスラックス、革靴といういでたちで。ネクタイがめくれてシャツの肩にかかっているから、相当急いで走ってくれたんだろう。

 その姿を見ると、改めて思う。誰かのために迷わず行動できる昴矢さんは、誰よりカッコよくて眩しいって。

 私は胸を詰まらせながらベンチから腰を上げ、彼に駆け寄った。

「ごめんなさい、迎えに来させてしまって……」
「俺の方こそごめん。那美のことできみに何度も心配をかけたよな。でも、もう大丈夫だから」

 肩を上下させながら、昴矢さんが優しい瞳で私を見下ろす。

 彼が〝大丈夫〟というなら信じるつもりだけれど、やっぱり彼女の放ったあのひと言は気になる。

 彼女はいったい、誰の子を……。

「あの、さっき那美さんの話が少し聞こえてしまったんです。彼女、妊娠していると言っていたような気がしたんですけど、あれは……」
「ああ、今、妊娠四カ月らしい。それで情緒不安定なところもあるみたいで」
「四カ月……ということは、もしかして初めて那美さんをマンションで見かけたあの時?」

 頭の中でサッと計算すると、それくらいの時期が怪しいように思えてしまう。

 彼を信じようと決めたはずなのに、私は思わず疑惑の眼差しを向けた。

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