恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
昴矢さんは心外そうに眉を顰め、軽くため息をつく。
「そうだとしたらこんな風にきみを迎えに来るはずないだろ。那美の相手は別にいる」
「で、ですよね……」
怒らせてしまったかとしゅんとする。昴矢さんは俯く私を励ますかのように、肩をポンと叩いた。
「ちょっと座って話そうか」
ベンチにの方へ戻り、彼と並んで座る。
昴矢さんはゆっくり、那美さんとその恋人、それから彼自身の関係について教えてくれた。
那美さんの恋人は、昴矢さんと同い年の井原翔真さんという男性で、那美さんだけがひとつ年下。家が近所だったので、昔から三人で行動することが多かったそうだ。
「那美の家は親がちょっと育児放棄っぽくてさ。だから、年上の俺たちと一緒にいることが心強かったんだと思う。子どもの頃から後を追ってくる那美を、俺たちも妹みたいに扱ってた」
育児放棄……。那美さんの年齢にそぐわないあの言動も、そういう事情が絡んでいたのか。
〝どこまでのワガママなら許されるだろう――〟
愛情を確かめるためにそうやって大人を試す幼児の話を聞いたことがある。