恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
彼が那美さんに特別な好意を抱いていたわけじゃないと知り、ホッとする。その反面、彼がエリート営業として活躍する裏に、まさかそんなネガティブな感情が隠れていたなんて驚いた。
驚いたけど……その気持ち、すごくわかる。
「じゃあ、私と一緒ですね」
「えっ?」
「私も、恋人とうまくいかなくなったのがきっかけで、馬鹿みたいに仕事に没頭したり、今のマンションに引っ越してみたりして、なんとか生きるモチベーションを保っていたんです。でも、そのおかげで昴矢さんと親しくなれたと思えば、数々の残念な経験も無駄ではなかったかなって思えます」
だから、彼ももう過去は振り返らないでほしい。
「志乃……そうだな。これまできみが出会ってきた男たちが馬鹿でよかった。そうじゃなきゃ、俺のものにできなかった」
彼の手がスッと頬に手が伸びてきて、優しく撫でられる。自然と絡んだ視線は、蕩けるように甘かった。
「もう、ただの相棒だなんて言わせない」
ドキン、と鼓動が大きく脈打った。なにか言おうと思うのに、熱いものがこみ上げて言葉にならず、潤んだ瞳で彼を見つめることしかできない。
昴矢さんはぐっと私を引き寄せ、その胸に強く抱きしめた。