恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「一度、自分の部屋へ寄ってシャワーを浴びてもいいですか?」
「ダメ」
「えっ?」
すんなり許可してくれるだろうと思っていたから、意外な返事に面喰らう。
昴矢さんはふっと苦笑して、きょとんとする私の鼻の頭に軽く口づけした。
「今夜は志乃と離れたくないんだ。シャワーや服なら俺のを貸すから、帰るなんて言うなよ」
甘えた目をされて、ドキッとした。
彼がそう言うなら無理に帰ろうとは思わないけれど……部屋は隣だ。そんなに寂しがることかな?
「離れると言っても、十分とかそれくらいだと思いますけど」
「志乃は今まで俺がどれくらい我慢してたか知らないからそんなこと言うんだ。会社でもマンションでも、すぐ隣にいるとわかっているのに、物理的にも精神的にも手を出せないあのつらさ。それがようやく報われるんだと思うと……」
昴矢さんの言葉にはかなり実感がこもっていた。
彼にそのつらさを味わわせていたのは、他でもないこの私。そう思うと良心がちくちく痛んで、彼の願いを叶えてあげたくなる。