恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「わかりました。今夜はずっと昴矢さんの部屋にいます」
「ありがとう。そうと決まれば早く帰ろう。ちなみに、背中なら空いてるけど――」
「お、お気持ちだけで大丈夫です」

 目の前でサッとしゃがんで背中を向けた彼がおかしくて、クスクス笑ってしまう。

 今回は昴矢さんも私が遠慮するとわかってやっていたようだ。「そう言われると思った」と自分でも軽く笑った後、スッと立ち上がって私に手を差し伸べる。

「じゃあ、こっち」
「……はい」

 彼の手に自分の手を重ね、しっかり握り合って歩き出す。

 時折わけもなく目を合わせては微笑み、くすぐったい幸せに胸をつつかれた。


 昴矢さんの部屋は隣同士でも間取りが少し違って、部屋数も我が家よりひとつ多い2LDKだそう。

 ひとまず通されたリビングはモノトーンの家具が最低限だけ置かれた生活感のない部屋だった。春に海外から戻って来たばかりだし、普段は会社にいる時間が長いから、じっくり家具をそろえる暇もないのかもしれない。

 部屋の中央にある大き目サイズのカウチソファに座らせてもらったものの、落ち着きなく部屋を見渡していると、昴矢さんがタオルと着替えを持ってきてくれる。

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