恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「シャワー、猛スピードで済ませてくるから逃げるなよ」
「この格好じゃ、逃げたくても逃げられません」
そう言って、彼に借りたぶかぶかのTシャツを引っ張る。昴矢さんがしたり顔で笑った。
「それもそうか。俺の作戦勝ちだな」
私の頭にポン、と手を置いてソファを下りた彼は、ネクタイの結び目を緩めながら思い出したようにこちらを振り返る。
「この部屋を出て左側のドアが寝室だから、ベッドで待ってて」
「了解、です」
パタンとドアが閉まり彼が出て行くと、今さらのようにぶわっと頬が熱くなる。
とうとう、この時が来てしまった……。
彼となら、抱き合ったりキスをしたりしても大丈夫。それだけで大きな進歩だと喜んでいるのに、もう次のハードルを超えなければならないなんて。
はち切れんばかりに暴れる心臓を抱えて、彼に言われた部屋へ移動する。
「お邪魔します……」
ドアを開けて見るも真っ暗で、手探りで壁のスイッチを押す。パッと明るくなった部屋の中央には巨大なベッドが鎮座していて、思わずもう一度電気を消してしまった。
うう、ただのベッドにここまで心乱されるとは……。
ひとりで勝手に悶えながらも、観念して明かりをつける。そろそろとベッドに歩み寄り、とりあえず端に腰かけた。