恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 手持無沙汰なので、部屋を眺めるくらいしかすることがない。

 簡素なデスクにノートパソコン、本や小物が並んだ棚。見せる収納にいくつものスーツが整然とハンガーにかけられているのがお洒落だ。

 リビングもそうだったけれど、ここも私の部屋よりだいぶ広い気がする。家賃も当然高いのだろう。

 同じ会社の同じ部署でお給料をもらっているはずなのに、昴矢さんはやっぱりインセンティブが多いんだろうな……私ももっとかんばらなくちゃ。

 緊張をほぐしたくて関係のないことを考えていたら、廊下から足音が近づいてきて、ガチャッとドアが開く。

 目が合った昴矢さんは上半身裸で、しかも腰にはタオルしか巻いていない。

 一瞬見ただけでも張りのある筋肉質な肉体だとわかり、その色気に心臓が止まりかける。ぐりん、と首を反対側に回してその危険な姿から目を逸らした。

「お、おかえりなさい」
「ただいま」

 言葉の前に「ふっ」と笑ったのが聞こえたので、彼も私が照れているのに気づいているのだろう。

 徐々に近づいてくる彼の気配を感じ、ギュッと目を閉じた。

 ベッドが軽く軋んで、彼が隣に腰かける。顔を逸らしたままでいる私の手を、そっと握った。

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