恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「……嫌だったら結婚なんてしませんよ」
せめてもの思いで極力そっけない言葉を選んで対抗するものの、私を見つめる昴矢さんの瞳には愛おしさがたっぷり溶けていた。
「どうしてこんなにかわいいんだろうな、俺の奥さんは」
強くて、たくましくて、かわいくない女。そう言われ続けた私に、そんな甘い言葉をかけてくれるのはあなただけ。
そう思うと胸が詰まるほどに幸福でいっぱいになって、彼への愛があふれる。私は背伸びをして、彼の耳元に唇を寄せた。
「だったら今夜は……いっぱい愛してください」
こんなセリフ、昴矢さんと出会わなければ一生口にすることはなかった。
自分の気持ちに素直になることの大切さ。それをいつだって私に教えてくれたのは、昴矢さんだ。
「言われなくてもそうするつもりだったよ。名実ともに志乃が俺のものになったって、じっくり確かめさせて」
もはや内緒話とは言えないトーンでそう言った昴矢さんは、こらえきれなくなったように私を抱きしめて、何度もキスをする。
今、世界で一番幸せな新郎新婦は、きっと私たちに違いない――。
最愛の夫の腕の中で目を閉じ甘い口づけを受け止めながら、私は長いことそんな自惚れに浸っていた。
FIN


