恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「これを担いでいたら間に合うかどうか怪しいだろ。人の多い駅で転倒でもしたら危ないし」
「もちろん気をつけます。それに、緩衝材をしっかり詰めてありますから瓶が割れる可能性もありません」
「俺が心配しているのはワインじゃない、きみのこと」
思いもよらない言葉をかけられ、ぽかんとする。
少し怒っているようにも見える真城さんの眼差しは真剣だ。
レストランに持っていく前にワインがダメになったらどうする。彼が言いたいのはそういうことだとばかり思っていたのに……まさか、私のことを心配していたなんて。
「きみは強くて賢い人だけど、だからって全部ひとりで解決しようとするなよ。ピンチの時は、使えるものは使う。今だって、たまたま同じ方向に用がある同僚がいるんだから、むしろ一緒に行かない方が非効率だろ。俺たちはもうすぐ仲間になるんだし、遠慮なく頼って」
悔しいけれど、反論の余地がなかった。
いくら間に合うと言っても、重たく大きなクーラーボックスを担いだ状態では人の多い電車や駅で苦労するのは目に見えている。
彼の言うように万が一どこかで転倒した場合、ワインが無事でも私になにかあったら、結局は取引先に迷惑をかけることになってしまう。
……考えればわかることなのに。