恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「あの、どうしてあんな言い方を? 完全に誤解されましたよ」

 さすがに抗議せずにはいられなくて、少しきつめの口調になった。

 しかし、見上げた先の真城さんに、後悔や反省の色はない。

「でも、ああでもしなきゃ針ヶ谷に迫られてただろ」

 真城さん、私たちの話を聞いていたのか。

 ってことは、一応助けてくれたってこと……?

「間に入ってくれたことは感謝しています。でも、もう少し別のやり方があったんじゃないでしょうか?」

 助けてもらった手前こんなこと言いたくないけれど、仕事のできる真城さんだったらもっとスマートにやり過ごせたのでは?と思えてならない。

「……それについては悪かったと思ってる。きみが困っている顔を見ていたら針ヶ谷に無性に苛立って。気が付いたら挑発するようなことばかり口にしてた」

 真城さんは私と目を合わせようとしない。その気まずそうな様子を見る限り、開き直っているわけではなさそうだ。

 それにしても、針ヶ谷さんに対してムキになったりするなんてやっぱり彼らしくない。これ以上責めても仕方がないけれど、ついため息がこぼれる。

「どうするんですか? 飲み会の雰囲気地獄ですよ、これ」
「だな。絶対に針の(むしろ)。針ヶ谷だけに」
「全然おもしろくないんですけど」

 ぽつぽつと話しているうちに、店に到着してしまう。

 今夜はワインが進みそうだ……。

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