恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「神崎さんって兄弟多いんだっけ?」
「はい。弟がふたりいる三人姉弟です。子どもの頃いつも弟たちに海老を取られて悔しい思いをしてたので、こうして優雅にマイペースで食べられるのが嬉しくて」
弟たちが育ち盛りになると〝お姉ちゃん〟の自分を意識して、あえてふたりに譲ることもあった。
同じきょうだいなんだから遠慮はいらなかったのかもしれないけれど、なんとなく我慢してしまうのが癖になっていたのだ。
「なるほどな。俺はひとりっ子だからその賑やかさにはちょっと憧れるけど、長女も大変そうだよな。神崎さんがしっかり者に育った過程がなんとなく想像できる」
「それほど自覚はありませんが、〝しっかりしなきゃ〟っていう強迫観念みたいなものはありました。別に親に強いられたとかじゃなく、自分で自分を縛ってただけなんですけどね」
弟たちは年子で、ふたりともお世辞にも大人しいとは言えないタイプ。小さな頃は外出させるだけで四苦八苦していた。
とくに母か父のどちらかしか付き添いがいない場合、上の弟より三つ年上の私は自然と保護者的役割になっていた。
「昔から責任感が強かったってことだ。きみらしい」
「まぁ、そのせいで甘え方とか一切わからないまま大人になってしまいましたけど……」
自嘲気味に話し、グラスに残ったスパークリングワインを飲み干した。
真城さんはコメントに困っているのか、黙り込んでいる。