恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「……なんか俺、今すごい青くさいこと言ってたな。説教なんかできる立場でもないのに、ごめん」

 きまり悪そうなその表情は、最近見慣れてきた素の真城さんだっだ。

 頭がよくて仕事ができて女性から人気で、挫折なんか知らないように見える彼だけど、実は私と同じで恋愛にはコンプレックスがあったり、こうして自分の発言を後悔したり、さっきみたいにつまらない洒落を言ったりする。

 そうして彼の意外な一面を知るたび、近寄りがたいキラキラオーラがいい意味で剥がれて〝エリートな先輩〟ではなく、ひとりの人間として彼を見ることができるようになっていた。

 彼は説教だなんて言ったけれど、それが彼の優しさによるものだっていうのも、ちゃんとわかっている。

「謝らないでください。お気持ちは本当にうれしいです。真城さんが相棒だからこそ頑張れている部分もあるので」
「それならいいんだけど。真面目な話、限界がきそうだったらその前に言えよ」
「了解です」

 仕事の話はそこでいったん終わりにし、ワインと料理を純粋に楽しむ。

 メインのリブロースステーキは霜降りなのに重たくなく、ほどよいコクのある赤ワインとよく合った。付け合わせのマッシュポテトもふわふわで上品。

 正直なところ、アメリカがルーツのステーキハウスはもう少し豪快で荒っぽいと思い込んでいただけに、驚きの連続だった。

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