恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「こんなに素敵なお店、どうやって知ったんですか?」

 思わず真城さんに尋ねる。

 東京には星の数ほど飲食店があるけれど、その中で当たりを引くのは結構難しい。

「他の人に言うなよ」

 厳しい目をした真城さんが、唇の中央に人差し指を立てる。

 あまり他人に明かしたくない、秘密のコネクションでもあるのだろうか。

 不思議に思っていると、彼が私の耳元に顔を近づけた。彼のシャツから同じ洗剤の匂い立ちのぼり、どきりとする。

 いくら男性とは言っても、そろそろ真城さんには耐性がついてもいい頃なのに……。

「……ネットで死ぬほど調べた」

 吐息交じりの低い声が艶っぽく、なんとなくカッコいいセリフを囁かれたように錯覚したけれど――ネット?

 きょとんとして目を瞬かせると、真城さんがスマホの検索履歴を見せてくれる。

【東京 アメリカワイン レストラン】
【浜松町 アメリカワイン ペアリング】
【アメリカワイン お洒落 レストラン 個室】

 ……等々、真城さんの努力の結晶がずらっと並んでいた。

「お、お疲れ様です……」

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