恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
いったいどこに行っているのだろう。総務にちょっとした用があるとか、化粧室でメイクを直したいとか、その程度の用件を済ませてすぐに戻ってくると思っていたのに。
三十分くらいで探しに出るなんて過保護な気もしたが、第六感とでもいうのか妙に嫌な予感がして、とりあえず営業部を出ようとした時だった。
ちょうど入れ替わりのようにオフィスに入って来た針ヶ谷とすれ違ったので、なんの気なしに尋ねる。
「針ヶ谷。神崎さん見なかったか?」
「神崎? さあ……今日も必死で資料室の整理やってるんじゃないのか?」
「資料室?」
それに、〝今日も必死で〟というのはどういう意味だ?
詳しく聞きたかったのに針ヶ谷はさっさと俺のもとを離れ、歩きながらポケットから出したスマホのゲーム画面に夢中になる。
間もなく定時とはいえ、ゲームくらい会社を出るまで我慢できないのか?
呆れつつも、今は針ヶ谷のことなどどうでもいい。
どうして神崎さんがこのタイミングで資料室の整理などするのかわからないが、他に心当たりもないので俺は同じ階の資料室へと向かった。
扉を開けると、部屋の明かりがついていた。
針ヶ谷の言った通りなら、神崎さんはここに……?