恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
棚と棚の間をキョロキョロしつつ、資料室の一番奥に足を踏み入れた、その時。
「――神崎さん!」
床に座り込み、壁に身を預けて俯く彼女がそこにいた。
目の前にしゃがみ込むと、神崎さんは虚ろな瞳に俺を映した。
「真城さん……?」
「どうしたんだよ。貧血? それとも、他にどこか具合の悪いところでも……」
「いえ……。ちょっと目眩がしただけです。大丈夫ですから」
俺は思わずため息をついた。真っ青な顔をして呼吸も苦しそうなのに、なにが大丈夫なのだろう。
こんな状態になって気丈に振舞う彼女もそうだが、どことなく疲れていそうだと気づいていながら結局何もできなかった自分の不甲斐なさに、一番腹が立った。
「大丈夫なわけないだろ。医務室に行こう」
「でも、まだ仕事が――」
「そんな体でなに言ってるんだ。ああもう、後でセクハラで訴えたかったらそうしてくれていいから、大人しくして」
「え、真城さ……あのっ」
座り込む彼女の体を支えるようにしたから腕を差し入れ、持ち上げて横抱きにする。
神崎さんの体重は想像よりはるかに軽くて、ちゃんと食べているのか心配になる。
「最近、食事をおろそかにしてた?」
「……はい」
「睡眠は?」
「寝られる時で三時間くらい……」
「それじゃ、会社で持つわけないだろ」