恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
彼は〝部屋が隣同士だから〟という意味で口にしたに過ぎないのに、精神的なことを言われているように聞こえてしまう。
昼間、彼の部屋の方ばかり見つめて悶々としていたせいかもしれない。勘違いも甚だしい。
心の中で盛大に羞恥と戦っていると、エレベーターは間もなく私たちの部屋がある十八階に到着し、ドアが開く。
真城さんはゆっくり歩き出しつつ、私を見下ろした。
「まぁでも、この荷物も部屋まで持って行くことだし、せっかくだからもらっておこうかな」
「はい! もう、何枚でもどうぞ!」
「一枚でいいんだけど……俺の家そんなにゴミ屋敷っぽい?」
「いえ、決してそういう意味では……」
「ごめん。わかってて意地悪言った」
……か、からかわれた。
これしきの会話で動揺するなんて、相当平常心を失っているようだ。
部屋の前まで着くと、鍵を開けてドアノブに手を掛ける。
それとほぼ同時に、マンション内にまで落雷の音が響いてきた。
心臓が大きく跳ねて縮こまり、ドアノブに触れていた手にはうまく力が入らなくなってしまう。かすかに震えるその手を胸に抱くと、真城さんが気づかわし気に私の顔を覗いた。