孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~


 どこかから呼び止められて、振り返る。

 そこにはスーツ姿の宮崎さんがいて、目が合うと片手を上げてこちらに近づいてきた。


「これから仕事? それとも上がり?」

「あ……今日は、早番で」

「そっか、じゃあ上がったところなんだ」


 失敗した。これから遅番で仕事だと言えば、仕事を理由にすぐに立ち去れたのにと素直に答えてしまった自分に後悔する。


「俺も今さっき福岡から帰ってきたところなんだ。良かったら、これからお茶でも食事でも、なんでもいいから行かないか」

「いえ……」


 急な誘いに、いい断りの言葉が出てこない。


「今はもう、仕事中じゃないだろ? 勤務中に声をかけたのは悪かったと思ってるよ。もうしない。だから、今なら問題ないだろ? 真白ともう一度話したいんだ」


 こちらが言葉を返せないほど五月雨に言葉を連ねられ、宮崎さんは極めつけに「俺はやり直したい」などと言ってくる。


『昔付き合っていた相手なら、簡単に諦めないかもしれない。今は落ち着いても、またいつ接近してくるかわからないからな』


 偽装結婚が始まったばかりの頃、遥さんに言われた言葉を思い出す。

 一度、遥さんが間に入ってくれてから、宮崎さんが私の前に現れることはなかった。

 だから、もうきっと大丈夫だと安心していたのに、遥さんの言う通りだった。

< 108 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop