孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
彼女の父親が上層部にいることで、親同士の勝手な話が進んでいることを少し前に知った。
『結婚するなら、CAの咲菜さんはどうだ』
突然そんな話を持ち掛けられて、もちろん保留で返答した。
今年で三十四歳。そろそろ身を固めてもいいんじゃないかと両親が囁き始めた。
自分の現状に不満はない。
好意もない相手と急かされて結婚をして、この先の人生後悔したくないと思ってしまうのが本音だ。
自由気ままに、誰にも縛られず生きていきたい。
そもそも、結婚自体に興味がないのだろう。
周囲には、結婚して幸せそうにしている同年代もいる。
でも、自分にはまだその境地はわからない。
誰にも捕まらないように周囲に気を配りながら、帰宅前に空港内のカフェで一杯コーヒーを飲んで行こうと店に入る。
本日のコーヒーをオーダーし、最奥の席を陣取った。
こうしてひとりでコーヒーを飲む時間も、向かいに誰かがいてあれこれ話題を出されたりしたら煩わしいと考えてしまう。
そんな思考な時点で、女性と交際をしたり、ましてや結婚なんて無理なのだろう。
一緒にいたい、同じ時間を共有したい、そんな風に思える相手に出会えたのならこんな風には思わないのかもしれないが……。
「空いてて良かったー。ここでいっか、四人座れる」