孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
賑やかな声が聞こえてきてちらりと目を向けると、店内に入ってきたのはうちの会社のグランドスタッフの制服。
ちょうど観葉植物の木がいいところに置いてあって、向こうからこちら側は見えにくいと思われる。木に重なるようにして椅子に体を預けた。
「ね! 見た? 高坂機長」
気づかれないようにと思った矢先に自分の名前が聞こえてきて、驚いて目を向ける。
どうやらこちらに気づいたわけではなく、話題に出されたようだ。まさかここに本人がいるとは思いもしないだろう。
「見た! さっき見た! 私、昨日出勤じゃなかったからさ、今日韓国から帰られた時にばっちり見たわよ!」
「少し今までより少し短くなったよね? ニューヘアも素敵すぎる」
週末日曜日、普段より少し伸びてしまった髪をカットしに出かけた。
ちょっと髪を切ったくらいで話題にされるとは、他に話すことがないのだろうか。
「でもさ、私、ゲートで車椅子のお客様お手伝いさせてもらったんだけど、難波さんが高坂機長にくっついて歩いてくの目に入ってさー。やっぱり噂通りなのかね?」
「ねー! でもさ、難波さんだったらなんかガッカリ感ない? あー、やっぱりそういう系好きなんだなーって」
「あぁ、わかる! 高坂機長みたいなクールな人でも、ああいう系には弱いのかー、みたいな。そこを変化球きたらまたファンになっちゃうんだけど」
好き勝手言われていてつい小さくため息が出てくる。
「ね、真白もそう思うでしょ?」
聞こえてきた名前に、無意識に木の影から様子を窺う。
話を振られた彼女は、「え?」となにもわかっていないように大きな目を更に大きくした。