孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「空から見る景色は、いつだって気まぐれに変化する。でも、海は青く、緑は青々している。人々が創造したものも美しい」
日本中、世界中を操縦席から見下ろしてきた遥さんだからこそ、この言葉にはリアルさがあり、説得力がある。
私の目がまだ見たことのないものを、彼の目は数多く映してきているのだと思うとわずかに鳥肌が立った。
「……って、これだとありきたりだな」
「いえ、実際に見ている人の言葉だから、そうは思いません」
「いつか、空には行ってみたいのか」
思いもよらぬ質問が返ってきて、「えっ」と声が出る。
遥さんの訊き方は、私が高所恐怖症だというのをわかっていてしていると伝わる。
「考えたことなかったですけど……いつか、見てみたいなって、今少し思ってます」
苦手を克服することは簡単なことではない。
でも、遥さんとこうして話すことがなければ、考えることすらしなかっただろう。
「もし、真白が自分で行ってみたいと思える日がきたら……その時は、俺が真白を空に連れて行きたい」
届いた言葉で、胸がぎゅっと締め付けられた。それが引き金となるように、鼓動が早鐘を打ち始める。
「はい、ありがとうございます」
遥さんにとっては、何気ない言葉のひとつだったかもしれない。
でも、私にはそれが特別なものに聞こえて、しばらく高鳴る胸は落ち着かなかった。