孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
え……? この部屋をやめて別の場所に引越しし直すってこと?
「ええ、それは構いません。こちらの勝手な都合ですので。……そうですか、助かります。では、早急にお願いします」
通話を終えた高坂機長は「よし」と小さく息をつく。
「あ、あの、今の電話って……移りたいって」
「ああ、ここの二階の物件がちょうど空いているそうだ」
なんともなさそうに言葉を返され目を見開く。
「えっ、本当に移るんですか?」
ひと際声のボリュームが上がった私に、高坂機長は不思議そうな表情を見せた。
「なにか問題があるか? もしかして、二階でも厳しいか」
「に、二階は大丈夫です。いや、そういうことではなくて」
「それなら良かった。これから不動産の担当者が来てくれるそうだ。下のエントランスロビーで待とう」
私の返事に『良かった』と最優先で出てきた言葉にどきりと鼓動が弾む。
高いところが苦手だと知って即対応してくれた行動力の速さに、驚きと申し訳なささが募る。それと同時に、じわじわと嬉しさが込み上げているのも確かで。
強引にこの偽装結婚の話が進み、俺様で自己中心的な人なのかもしれないと少し思っていたけれど、こうして気遣ってくれる一面があることを知った。
それから一時間もしないうち、不動産屋の担当が現れ、同じマンションの二階にある物件を案内された。