極愛〜狙われたら最後〜
「雨は心地いい」

そう言ってその日は私を優しく抱いた。

何度も雨と名前を呼ばれる度に胸が締め付けられた。
私はここにいるよと。
私は雫だよ。
あなたの妻だよと。

でもこうして記憶をなくして、目が見えない今でも私を求める龍臣が愛おしかった。

私も名前を呼びたくなった。

龍臣から伝わる手からは、以前のように雫に向けるようなそんな暖かさがどこかで感じられ、切なくなる。

どちらも私だけど、龍臣は別な人だと思ってる。

私がいるのに、他の人をこんな風に抱かないで…

自分でももうよく分からなくなりそう。

その日から毎日のように呼ばれて、優しく抱かれるようになった。

それでも繋ぎ目には一枚の薄い膜が覆われていて、今にもくっつきそうな唇には触れられない。

愛されてるようで、確実に距離がある。
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