【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 所作の美しさもダンスも、体が覚えているだけの、名ばかりへっぽこ貴族である。自信を持って得意だと言えるのは掃除のみ。解呪能力はあっても悪しき力がなければ役立つことがない。どう考えても、エリアナは皇妃の器ではないのだ。

 しかしながら、陛下は軽く「エリアナも妃候補になれ」とのたまう気がしなくもない。

 背中にじんわりと嫌な汗がにじんできた。

 ──…………億万が一にもそんな話がきたら、きっぱりお断りしないと……!

 皇妃はこの国で生まれ育ち、貴族教育を受けてきた真のご令嬢こそふさわしいではないか。

「私は候補にはならないと思います。皇都に来た目的は果たしましたし、もうそろそろ殿下と一緒にアルディナルに戻るでしょうから」

 そうだ。億万が一にも声がかかる前に、さっさと帰るべきだ。

 エリアナは握った拳にぐっと力を込めた。

 ──殿下に早く帰りましょうとお願いしなくちゃ。

「え~っ、そうなんですの? エリアナは解呪師として皇都に残るものと思っていましたわ」

 残念そうに眉を下げたのはカトリーヌである。

「せっかく親しくなりましたのに」

 そんなふうに言われれば、エリアナもひどく寂しくなってしまう。彼女たちは初めての友人なのだから、これきりになるのは非常に残念だ。

「わたくし手紙を送りますわ」
「わたくしも」
「そうですわ! いっそ、みんなでアルディナルに会いに行きませんか?」
「まあそれは、素敵ね!」

 いつ戻るのか決まっていないけれど、令嬢たちは初旅行への期待できゃあきゃあと盛り上がっている。

 エリアナに会うこともそうだけれど、アカデミーを卒業して結婚してしまえば自由に遠出することもできなくなる。その前に友人たちと旅をして思い出を作りたいらしい。

 家格の高い彼女たちがアルディナルに来るならば、宿よりも城に滞在してもらうほうがもてなしも十分にできるし安全だろう。

< 156 / 223 >

この作品をシェア

pagetop