【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 マリービクスが先に確かめてくるとエリアナを残し、うずくまっている人につく侍女に声をかけている。

 靄が薄く、アカデミーの時のように文字が浮かび上がってこない。おそらく強力な力ではないのだろう。

 それでも必死に靄の正体を確かめようとすると、ぼやぁっと文字が浮かんできた。薄くてかすれた文字だけれど、なんとか読み取れたのは『腹痛』だった。

「エリアナさま」

 様子を見ていたマリービクスが呼ぶ。いつも落ち着いている彼女の切迫した声に、エリアナも急いで近づいた。

「お腹が痛いそうです」

 ──やっぱり……!

「いつから痛むのですか?」
「このお方はルシータさまでございます。スグレテイル侯爵家のご令嬢です。最近たびたびこうなられるのですけど、今は特にひどく痛みを訴えられていて、どうしたらいいのか」

 もう一人の侍女が騎士を呼びに行っていると話す侍女は涙ぐんでいる。ルシータの顔面は蒼白にゆがみ、額に脂汗が浮かんでいた。

「私はエリアナと申します。ルシータさま、お体に触れてもいいですか? 休める場所にお連れしましょう。あちらのベンチに」

 ルシータが浅い息をしながらうなずいたので、エリアナはそっと背中に触れた。途端にピチッと小さな音がしてルシータが微かなうめき声を上げる。
 その数秒後。

「あら? もう痛くありません」

 金髪に紫の瞳が美しいルシータは不思議そうに眼を瞬かせた。

「ルシータさま、もう大丈夫なのですか!?」

 侍女の涙ながらの問いかけに微笑み、立ち上がってすっと背筋を伸ばした。

「ええ、それどころか清涼な心地がします。エリアナさま、あなたがなにかしてくださったの?」

 とてもきれいな瞳で、苦悶に満ちていた姿が嘘のようにきらきらと輝いている。

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