【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
五章 陛下の妃候補になりました
エリアナ、悪女になる
「というわけで、エリアナよ、私の妃候補になれ」
本宮殿の応接間に入ってきた陛下は、畏まるエリアナにズバリと申し渡した。
これは応接間に陛下と一緒に入ってくるなりビューンと飛んできた赤い小鳥・スサノーンをなんとか受け止めた直後のことであった。
「なんだと!?」
いち早く反応したのは大公姿のルードリックで、エリアナはスサノーンのラブラブ頬ずりを受けながら固まることしかできない。
──あわわわわ、『というわけで』とは、どういうわけなのですか?
妃候補はアマンダたちとのお茶会で可能性を示唆され、恐れていたことでもある。断固拒否をしようと決めていたのに、実際に耳にすれば衝撃が強すぎるあまりにエリアナの口はぱくぱく動くばかりだった。
「ヘイブン、どういうことだ。妃候補は断ったはずだ」
エリアナがなにも言えずにいるうちに、ルードリックが剣呑な声を出したが、陛下は「ははは」と愉快そうに声を立てるだけだ。
「……ヘイブン」
ルードリックの全身から、ゴゴゴゴと黒いオーラが立ち上っているように見える。怖い。
「ルード、そうにらむな。妃候補と言っても本物ではないのだよ」
「チッ、当然だ。だが『というわけで』もクソもないだろう。経緯を省くな」
──殿下の言葉遣いが荒すぎる……!
ルードリックも皇族だけれど、相手は皇帝陛下だ。舌打ちまでして不敬だと叱られないか心臓がバクバク音を立てる。
「見ろ。エリアナが震えているだろう」
エリアナをちらりと見た陛下は口角を上げる。
「ほぼルードのせいだと思うが? まあ、無理にとは言わん」
笑顔とは裏腹に、拒否は許すまじの気迫が見え隠れしている。快活でおおらかに見えても、帝国を統べる皇帝陛下の威厳は半端ではない。
「此度におこったことが別の妃候補にも及んでいるのか、秘密裏に調べてほしい。要は潜入捜査だよ」
「つまり、エリアナに『腹痛』の原因究明と、犯人の特定をせよと?」
「そうだ。解呪師のエリアナならば、悪しき力に害されることがないだろう。ゆえにエリアナに狙いを集中させ、ほかの候補を護ることももくろんでいる」
二人は一見普通に会話しているようだけれど、体の周りに恐ろしいまでの気迫の壁が立ち上っていて、エリアナが口をはさむ隙がない。この場での癒しは、甘えた声で「クルルル」と甘え声を出して頬を摺り寄せるスサノーンと、膝の上で丸くなっているちび獅子のぷにぷにな肉球だけだ。
「エリアナを囮にするな。物理的な攻撃は跳ね返せないんだ。危険すぎる」
「ルードよ。なにを言ってる。影を付けているではないか。ゆえに、熟考した末に被害なく解決できると判断した」