【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「エリアナは王太子妃教育を受けていたのだろう? 礼儀や社交は王国と変わらないと思うが、不安ならばサポートできる者をつけよう。それに母上にも話を通しておくから、特別気を張ることはない」

 不安要素をことごとく潰しつつ皇帝の圧を向けられれば断る余地がない。

「エリアナならば、本気で妃を目指してもらってもいいんだが」

 とんでもないことを軽く口にされ、口をパクパクさせるエリアナをしり目に、ルードリックがすっぱりと言い放った。

「ふざけたことを言うな」
「……ふむ、エリアナが断れば、この件は魔術師部に依頼することになる。皇妃選定は国の存亡にかかわる重要な行事だ。長官は多忙だが、睡眠時間を削られるだけだ。なんということもない」

 陛下はあっさりとのたまい、にっこり笑った。

 ──あわわ、トーイさん、過労で倒れちゃう!

 そんなことを言われれば、エリアナの選択はひとつに絞られる。不肖ながら任務を受けるべきだ。

「は、はいっ、陛下の妃候補、解呪師として全力で努めさせていただきますっ」

 拳を握って宣言すれば、肩に乗っているスサノーンが翼を広げて「クエエエエ!」と共鳴し、ルードリックが観念したように大きく息を吐いた。



 数日後のパール宮殿の一室。エリアナはアマンダとカトリーヌに向き合った。

 エリアナは赤毛のウィッグをかぶり、黒いドレスを身に着けている。気の強そうなメイクはマリービクスの腕のたまもので、鏡に映る姿は記憶の中にあるヴァイオレット・ズルイータそのものだ。

 エリアナがこんな姿をしているのは、あの日ルードリックがつけた条件に関係している。

 ひとつめはコール伯爵家の令嬢、マクスの妹として潜入させること。
 隣国から戻ったばかりとすれば途中加入の体裁もでき、なにより本当に隣国で暮らしていたのだから怪しまれる隙もない。

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