【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「そうよ、なによ……」
ルシータは、新参候補のヴァイオレット・コールが出した守護獣の威圧から皇太后を護り、心証をよくしていた。こんなのは計算外である。
しかし畏怖の存在を目の当たりにしても、とっさに動くことができる胆力は誰にもまねできない。そこは認めるしかない。
「本当に邪魔だわ。もう時間がないのに」
妃選定が始まってもうずいぶん経つ。もうそろそろ皇太后の評価も定まってきているだろう。
それなのに新しい候補をいれるなんて、あの女の言う通り、皇妃にふさわしい者がいなかったというのか。
「そんなはずないわ。わたくしだって教養は二番目の成績だったもの」
それもトップとは僅差だったはずだ。
なんとかルシータ・スグレテイルとヴァイオレット・コールを排除したい。
呪いが自分に返らないように効果を弱め、じわじわ締め上げてなんていられない。一気に二人とも消してしまおう。自分ならできるはずだ。
「わたくしには力があるもの」
実家はこれといって秀でたものもなく、華やかなスグレテイル家の陰に隠れてしまい、社交界では目立たつことがなかった。
皇妃になれば実家の権力は増し、大公家をもかしずかせ、陛下の愛情を一身に受けて悠々自適な生活を送ることができる。そのためには手段を選んでいられない。
「そうだわ。回復不可能な傷を負わせて退場。それをあの女の仕業にするのはどうかしら」
瑕疵がつけば、ふたりとも二度と社交界には出てこられない。良い縁談もなく、結婚もできない。
「永久追放と同じね。それがいいわ。皇妃の座は渡さない。地味な生活とはサヨウナラ。わたくしが帝国で君臨するのよ!」
ニヤッと笑い、白く美しい手が綺麗な文様の箱に触れると、黒い靄がぐわっと立ち上った。