【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「ああっもう! ちっともうまくいかないじゃない!」

 乱暴にソファに座り天井を仰ぐ。

 ルシータは上質な【黒】を用意していた。黒いダイヤモンドに敵う【黒】を用意できる家はないだろう。あれを最初に披露されてしまったおかげで、自分が用意したものは出すのもはばかれるほどだった。

 ルシータは自分のものが誰よりも上質だとわかっていたはずだ。配慮して出番を最後にすればいいのに、あえて一番にするとは悪辣すぎて呆れてしまう。

 冷たい外見の通り、冷徹で残酷な女だ。

 優秀なのは間違いないが、あんな性格の者に皇妃はふさわしくない。自分のように誰からも愛される可憐さがなければ人望も集められず、外交もうまくいくはずがない。

 すべて完璧で隙がなくつまらない女。陛下もあのようなかわいげのない女より、可憐で愛らしい女に愛情を持つに決まっている。

「それになんなのよ。今さら新規の妃候補なんて。でしゃばりにもほどがあるわ。断りなさいよ」

 つややかな赤毛で美しく、性格は高慢で自信過剰。皇太后が褒めるほどの才女で、兄が優秀なおかげで雷撃の大公を味方につけた伯爵令嬢ヴァイオレット・コール。突然の強敵出現におののいた候補は自分だけではないはずだ。

 実家の力が強くて才色兼備なルシータ・スグレテイルが皇妃になるだろう、というのが皇妃選定前からの評判だった。自分を含めたほかの候補なんて、実家の力、美貌、教養、判断力、行動力、どの資質も一長一短で似たようなものだからだ。

 だからルシータさえ排除でき、かつ試験中に目立つことができれば、皇妃の座は自然に自分のものになると考えた。
< 183 / 223 >

この作品をシェア

pagetop