【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
力を使うたびに痛みが走るのは、人の体には過ぎる力を無意識的に制御させるためだと考察している。
人を恨まない。傷つけない。自慢しない。
そんな彼女が苦労して悪役演技を取得したことを無駄にはさせたくない。任務成功の達成感を奪うこともしたくない。
しかしいつまでも呪術が通じなければ、相手は物理的な手段を講じてくるはずだ。
「それからもう一つご報告を。ここに参上する前、庭の暗闇で妃候補が父親から叱責されているのを目撃いたしました〝賢さも美しさも突出していないお前のような女が皇妃になるにはこれしかないんだ。早く実行しろ〟と。顔は確認できませんでしたが、ゼネスが追っています」
ゼネスは影獅子の中でも尾行に長けたメンバーだ。すぐに正体が割れるだろう。
──既に実行されている呪物とは別か。エリアナに危害を加えるのなら、俺が地獄の底を見せてやろう。
ルードリックの体からゆらりと気迫のオーラが立ち上る。ビリビリと肌を刺す空気に、さすがのマリービクスも畏怖の冷や汗をかく。
「引き続きエリアナを護れ。傷ひとつつけるな」
「必ず。命に代えましても」
ふっとマリービクスが消える。
見境なく呪物を使っていたグレッタとは違い、妃候補は用意周到で実家のバックアップもあるから難しい。
「……はがゆいな」
いや、この状況がはがゆいのは犯人も同じだ。妃候補にエリアナが加わったことで焦ってもいるだろう。懸念通り、近いうちに大きく仕掛けてくる。
──ヘイブンにも警告しておこう。
ルードリックは陛下のもとへ向かった。