【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
 そんな危険なところに、今まさに差し掛かろうとする妃候補がいるではないか。エリアナはひゅっと息を吸った。

「大変! マリービクス、急ぎましょう!」

 駆けだしてもドレスの裾が邪魔でどうにも遅い。階段まではいまだ遠く、焦燥感だけが膨らんでいく。

「だめっ、ルシータさま! お待ちください!」

 とっさに叫ぶと彼女は振り返り首を傾げ、侍女はキッとにらんでくる。

「コール伯爵令嬢さま、なにごとでございましょうか」
「イオナ落ち着きなさい。わたくしは呼び止められただけよ」

 急ぎ足で近づくエリアナに対してあからさまに敵意を向けてくる侍女を諫め、ルシータは落ち着いた様子だ。

「ヴァイオレットさま、なんでしょうか?」

 けれどどうしたものか。呼び止めた理由を考えていない。
 呪物があると言うわけにもいかず、冷や汗を感じつつも、脳内辞書【若き公爵の愁いと最愛】をめくった。

「そ、その、今日は陛下が参加されるお茶会でしょう。教養トップの才女であるこのわたくしが先に行きますの。みなさまは親鳥のあとを追うひな鳥のごとく、わたくしの後に続くとよろしくてよ!」

 ルシータはきょとんとしていて、場がシーンとしている。

 ──イマイチだったかしら?

 高笑いを追加してごまかしたいところだが、残念なことに胸がドキドキしすぎてできそうもない。

「ヴァイオレットさまの後を……そういたしましょう」

 少し考えた後そういって、ルシータはふわりと微笑み一歩下がった。

 侍女たちは「お嬢さま!」「なぜおさがりに!?」とぐぬぬ顔だ。

 これでエリアナが先に階段を下りれば自然に解呪される。
 そうホッとしたのもつかの間、ヒロイニアが颯爽と現れた。

「あら、ヴァイオレットさま、なにをおっしゃるのかしら。たかだか階段を下りるのに教養トップもなにも関係ありませんわ! 残念ながらわたくしが先んじて行かせていただきます! あなたこそ、わたくしのひな鳥におなりなさいな。おーほっほっほ」

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