【更新】護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 悪役も真っ青の気の強さで言い放ち、エリアナたちのわきをすり抜けていく。

「あ、ダメですってば!」

 止める甲斐もなくヒロイニアはツカツカ歩き、呪物の仕掛けられた箇所に脚を伸ばした。瞬間、黒い靄がぐわぁッと広がりヒロイニアの足に巻き付いた。

「っ、ヒロイニアさま!」

 ぐらりとバランスを崩した彼女の手を取ろうとするが、スカッと空を切ってしまう。同時に解呪の音が響く。

 ──しまったわ。先に解呪しておけば……!

「きゃああああぁぁっ」

 誰かが叫んでいる。

「ヒロイニアさま!!」

 侍女が青ざめ、落ち行くヒロイニアの顔が恐怖にゆがむ。

「大変よ!! 誰か来て!! ヴァイオレットさまがヒロイニアさまを……!」

 パトリシアの叫び声を聞いて集まってきた騎士たちがきょとんとした顔でエリアナたちを見た。

「叫び声を聞いたのですが、なにがあったのですか?」
「まあ、見てわかりませんの? ヴァイオレットさまが突き落と……っ、え?」

 転がり落ちたはずのヒロイニアの姿は階下になく、パトリシアの唇だけが「どういうこと?」と動いている。

「なにもございませんでしたわ、騎士さまがた。きっと虫がいたのでしょう。そうですわね? パトリシアさま?」

 うろたえるパトリシアを庇うようにして、冷静に発言したのはルシータだ。

「はっ、え、えぇ、そうですわ。驚いてしまいましたの……お騒がせして申し訳ございません」

 パトリシアはドレスをきゅっと掴んでうつむいてしまい、後ろから騒ぎを見ていたシラーニャは扇子の陰からじっと彼女を見つめ、フロリアは愕然とした表情をしている。
 その背後でもうひとりの候補がじっとエリアナを見つめていた。

 ──あのお方は、ミカキーテ侯爵令嬢……。

 彼女はおとなしくて目立たないけれど、いつだってエリアナのことを観察するように見ている。背後で聞き耳を立てている、と感じたこともあった。

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