早河シリーズ第六幕【砂時計】
美月の記憶では三浦の前で絵理奈が美月の名を呼んだのはたった今、出ていく美月を引き留めた時だ。その直後に三浦が美月の名前を口にした。
美月は絵理奈のように三浦に名前を名乗っていない。
ギリシャ神話と人間心理学の受講生は70人弱。その中で女子学生は50人程度。この講義の学生名簿には浅丘美月の名が載っていても、絵理奈と一緒にいる女子学生が“浅丘美月”だと三浦にわかるはずない。
それでも三浦は美月が“浅丘美月”だと知っていた。
『今日の小テストで浅丘さんが書いた心理分析、素晴らしい内容でしたよ。短時間であれだけの分析ができるのは優秀です』
「……ありがとうございます」
美月の表情が固いことなど三浦は気にもしていないらしい。
「先生、私のはどうでした?」
『志田さんは……もう少し文章を簡潔にまとめられると、もっとよくなりますね』
「簡潔ですかぁー? どこをどう簡潔にすればいいんですか?」
三浦に駆け寄った絵理奈はどさくさ紛れに彼の腕に触れる。
三浦が絵理奈に説明をしていると、講義室に設置されたスピーカーから構内放送のメロディが流れた。
{学生の呼び出しです。総合文化学部2年の志田絵理奈さん。昼休み中に6号館、杉下の部屋まで来て下さい}
『志田さん、呼び出されていますよ』
「ああー! そうだった。杉下先生のところにレポート提出しないといけないんだ」
落胆する絵理奈は名残惜しげに掴んでいた三浦の腕を離した。美月は絵理奈に近寄った。
「早く行った方がいいよ。お昼ご飯、いつもの場所で比奈達と待ってるね」
「うん。行って参ります……。三浦先生、またお話してくださいね。美月、後でね!」
絵理奈は慌ただしく講義室を飛び出して行く。 男性アイドルの追っかけもしている絵理奈はミーハーで移り気。
三浦に対しても男性アイドルを追いかける時と同じ感覚なのだろう。
絵理奈を見送った美月は一息つくと、表情を険しくして三浦を一瞥する。彼もこちらを見ていた。
「どうして私が浅丘美月だとわかったんですか?」
『プリント提出の順番かな』
三浦は教卓にもたれてスラリと長い脚を組んだ。
美月は絵理奈のように三浦に名前を名乗っていない。
ギリシャ神話と人間心理学の受講生は70人弱。その中で女子学生は50人程度。この講義の学生名簿には浅丘美月の名が載っていても、絵理奈と一緒にいる女子学生が“浅丘美月”だと三浦にわかるはずない。
それでも三浦は美月が“浅丘美月”だと知っていた。
『今日の小テストで浅丘さんが書いた心理分析、素晴らしい内容でしたよ。短時間であれだけの分析ができるのは優秀です』
「……ありがとうございます」
美月の表情が固いことなど三浦は気にもしていないらしい。
「先生、私のはどうでした?」
『志田さんは……もう少し文章を簡潔にまとめられると、もっとよくなりますね』
「簡潔ですかぁー? どこをどう簡潔にすればいいんですか?」
三浦に駆け寄った絵理奈はどさくさ紛れに彼の腕に触れる。
三浦が絵理奈に説明をしていると、講義室に設置されたスピーカーから構内放送のメロディが流れた。
{学生の呼び出しです。総合文化学部2年の志田絵理奈さん。昼休み中に6号館、杉下の部屋まで来て下さい}
『志田さん、呼び出されていますよ』
「ああー! そうだった。杉下先生のところにレポート提出しないといけないんだ」
落胆する絵理奈は名残惜しげに掴んでいた三浦の腕を離した。美月は絵理奈に近寄った。
「早く行った方がいいよ。お昼ご飯、いつもの場所で比奈達と待ってるね」
「うん。行って参ります……。三浦先生、またお話してくださいね。美月、後でね!」
絵理奈は慌ただしく講義室を飛び出して行く。 男性アイドルの追っかけもしている絵理奈はミーハーで移り気。
三浦に対しても男性アイドルを追いかける時と同じ感覚なのだろう。
絵理奈を見送った美月は一息つくと、表情を険しくして三浦を一瞥する。彼もこちらを見ていた。
「どうして私が浅丘美月だとわかったんですか?」
『プリント提出の順番かな』
三浦は教卓にもたれてスラリと長い脚を組んだ。