早河シリーズ第六幕【砂時計】
香澄の腕を抜けたパジャマが床に落ち、下着姿を晒す。
『……何してんの?』
「その気にさせたくて……」
香澄の手が早河の腰に巻かれたベルトの金具を外す。その手は小刻みに震えていた。ズボンの上から早河の下半身に触れる香澄の手を彼は掴んだ。
『香澄、止めとけ』
「だって……こうでもしないと私のこと女として見ないでしょ。ね、私としよ? 仁くんがしてほしいこと何でもするから」
『香澄』
早河はパジャマを香澄に羽織らせ、そのまま彼女を優しく抱き締める。
『ごめんな』
「……どんな意味での“ごめん”?」
『色んな意味でのごめん。知らない間にお前を傷付けていたんだな」
「好き、だったんだから。ずっと……。仁くんに彼女ができるたびに私は泣いていたんだよ?」
『うん、ごめん。……ありがとな』
香澄は涙を溜める目を伏せて早河の胸元に寄り添った。いつでも受け入れてくれる温かなこの胸元が彼女は大好きだった。
「仁くん、好きな人いるの?」
『……いるよ』
少しの間の後に彼は答える。香澄が見上げた早河の顔は穏やかで優しかった。心がきゅっと痛くなる。
「好きな人ってどんな人?」
『そうだな……面倒くさい女かな』
「えー。それだけじゃわかんないよぉ」
『ははっ。だよな。一度言い出したら聞かない、頑固で泣き虫な俺の助手だよ』
「仁くんの助手って……香道さんの……?」
『そう。香道さんの妹。俺が好きになる資格のない……好きになっちゃいけない相手だ』
何も言えない香澄は哀しげに早河を見返した。早河は香澄の頭をポンポンと撫でて微笑する。
『腹減ったな。この辺で飯食えるとこある?』
「近くにファミレスならあるよ」
『じゃそこで朝飯食って帰るかな。香澄も一緒に行くか?』
「行く! すぐに支度するから待っててね」
香澄が身仕度を整えている間、早河は手帳を開いた。矢野や香澄の働きのおかげでかなりの情報が集まった。
あと必要なものは決定的な証拠。
慎重に事を運ばなければ負け戦になる。これはカオスとの頭脳戦。カオスを確実に追い込むにはまだ時間が欲しい。
だが早河は気付いていなかった。ケルベロスが早河を陥れるため、ひっそり影を潜めてこちらへ足を忍ばせていることに。
『……何してんの?』
「その気にさせたくて……」
香澄の手が早河の腰に巻かれたベルトの金具を外す。その手は小刻みに震えていた。ズボンの上から早河の下半身に触れる香澄の手を彼は掴んだ。
『香澄、止めとけ』
「だって……こうでもしないと私のこと女として見ないでしょ。ね、私としよ? 仁くんがしてほしいこと何でもするから」
『香澄』
早河はパジャマを香澄に羽織らせ、そのまま彼女を優しく抱き締める。
『ごめんな』
「……どんな意味での“ごめん”?」
『色んな意味でのごめん。知らない間にお前を傷付けていたんだな」
「好き、だったんだから。ずっと……。仁くんに彼女ができるたびに私は泣いていたんだよ?」
『うん、ごめん。……ありがとな』
香澄は涙を溜める目を伏せて早河の胸元に寄り添った。いつでも受け入れてくれる温かなこの胸元が彼女は大好きだった。
「仁くん、好きな人いるの?」
『……いるよ』
少しの間の後に彼は答える。香澄が見上げた早河の顔は穏やかで優しかった。心がきゅっと痛くなる。
「好きな人ってどんな人?」
『そうだな……面倒くさい女かな』
「えー。それだけじゃわかんないよぉ」
『ははっ。だよな。一度言い出したら聞かない、頑固で泣き虫な俺の助手だよ』
「仁くんの助手って……香道さんの……?」
『そう。香道さんの妹。俺が好きになる資格のない……好きになっちゃいけない相手だ』
何も言えない香澄は哀しげに早河を見返した。早河は香澄の頭をポンポンと撫でて微笑する。
『腹減ったな。この辺で飯食えるとこある?』
「近くにファミレスならあるよ」
『じゃそこで朝飯食って帰るかな。香澄も一緒に行くか?』
「行く! すぐに支度するから待っててね」
香澄が身仕度を整えている間、早河は手帳を開いた。矢野や香澄の働きのおかげでかなりの情報が集まった。
あと必要なものは決定的な証拠。
慎重に事を運ばなければ負け戦になる。これはカオスとの頭脳戦。カオスを確実に追い込むにはまだ時間が欲しい。
だが早河は気付いていなかった。ケルベロスが早河を陥れるため、ひっそり影を潜めてこちらへ足を忍ばせていることに。