早河シリーズ第六幕【砂時計】
二葉書房取材班となぎさを乗せた新幹線は京都駅を13時35分に発車して15時53分に東京駅に到着した。
二葉書房の編集部メンバーはこれからタクシーで会社に向かう。
「なぎさちゃん、一緒に乗って行かなくていいの? 会社行く前になぎさちゃんの家寄るよ?」
戸田美奈子は土産物がたんまり入った紙袋を自由通路の床に置いた。金子拓哉と沢口賢は先にタクシー乗り場に向かっている。
「大丈夫です。私の家、駅からすぐなので。寄りたい所もありますし……」
「寄りたい所って彼氏の家かな?」
「えっ……」
赤面するなぎさを見て美奈子は困った顔で眉を下げた。
「やっぱりねぇ。私、余計なことしちゃったかも」
「余計なこと?」
「金子くんに告白されなかった?」
金子との一件は誰にも知られていないと思っていたなぎさは絶句した。
「金子くんがなぎさちゃんのこと好きなのは知ってたんだ。振られたって聞いて可哀想になっちゃってね、一昨日の夜に彼をけしかけちゃったのよ。でも今日の二人を見てると金子くんがまた振られたんだなってわかって。なぎさちゃんにも金子くんにも悪いことしちゃったわね。ごめんなさい」
美奈子は足元にある土産物の袋の山を見下ろした。金子をけしかけたのはこの土産物を選んでいる時だ。
「戸田さん……。そんなことないです。こんなこと言うと金子さんに失礼になってしまいますけど、金子さんから告白されて、私も自分の気持ちを確かめられました。だから謝らないでください」
「ありがとう。あなたのそういう素直な性格がモテるのよねぇ。うちの娘もなぎさちゃんみたいな子に育って欲しいわ」
明るく笑う美奈子になぎさも笑顔を返す。人混みを掻き分けて自由通路を金子が歩いて来た。
『戸田さーん。何そこで油売ってるんですか。沢口さんがタクシーで待ち構えていますよ』
「はいはーい。だってお土産が重いんだもん」
『だから買い過ぎだって言ったんですよ……』
美奈子とのやりとりに項垂《うなだ》れた金子は側にいるなぎさに目を向ける。
「先行ってるねー」
美奈子は金子の背中を軽く叩いて、重たそうな土産物の袋を抱えて通路の人混みに紛れた。彼女なりに気を利かせたらしい。
『……お疲れ様』
「お疲れ様でした」
昨夜のこともあり面と向かって会話をするのも気恥ずかしい。それでも二人は視線を合わせる。
『今回は本当にありがとう。香道さんのおかげでいい記事が出来るよ』
「私も仕事だってことを忘れるくらいに楽しかったです。ありがとうございました」
『帰り道、気をつけてね。好きな人にちゃんと気持ち伝えるんだよ』
「はい。……これから彼に会いに行ってきます」
照れ臭そうにはにかむなぎさは幸せに見えた。幸せかそうじゃないかは自分で決めると言った彼女は、今幸せなのだろう。
二葉書房の編集部メンバーはこれからタクシーで会社に向かう。
「なぎさちゃん、一緒に乗って行かなくていいの? 会社行く前になぎさちゃんの家寄るよ?」
戸田美奈子は土産物がたんまり入った紙袋を自由通路の床に置いた。金子拓哉と沢口賢は先にタクシー乗り場に向かっている。
「大丈夫です。私の家、駅からすぐなので。寄りたい所もありますし……」
「寄りたい所って彼氏の家かな?」
「えっ……」
赤面するなぎさを見て美奈子は困った顔で眉を下げた。
「やっぱりねぇ。私、余計なことしちゃったかも」
「余計なこと?」
「金子くんに告白されなかった?」
金子との一件は誰にも知られていないと思っていたなぎさは絶句した。
「金子くんがなぎさちゃんのこと好きなのは知ってたんだ。振られたって聞いて可哀想になっちゃってね、一昨日の夜に彼をけしかけちゃったのよ。でも今日の二人を見てると金子くんがまた振られたんだなってわかって。なぎさちゃんにも金子くんにも悪いことしちゃったわね。ごめんなさい」
美奈子は足元にある土産物の袋の山を見下ろした。金子をけしかけたのはこの土産物を選んでいる時だ。
「戸田さん……。そんなことないです。こんなこと言うと金子さんに失礼になってしまいますけど、金子さんから告白されて、私も自分の気持ちを確かめられました。だから謝らないでください」
「ありがとう。あなたのそういう素直な性格がモテるのよねぇ。うちの娘もなぎさちゃんみたいな子に育って欲しいわ」
明るく笑う美奈子になぎさも笑顔を返す。人混みを掻き分けて自由通路を金子が歩いて来た。
『戸田さーん。何そこで油売ってるんですか。沢口さんがタクシーで待ち構えていますよ』
「はいはーい。だってお土産が重いんだもん」
『だから買い過ぎだって言ったんですよ……』
美奈子とのやりとりに項垂《うなだ》れた金子は側にいるなぎさに目を向ける。
「先行ってるねー」
美奈子は金子の背中を軽く叩いて、重たそうな土産物の袋を抱えて通路の人混みに紛れた。彼女なりに気を利かせたらしい。
『……お疲れ様』
「お疲れ様でした」
昨夜のこともあり面と向かって会話をするのも気恥ずかしい。それでも二人は視線を合わせる。
『今回は本当にありがとう。香道さんのおかげでいい記事が出来るよ』
「私も仕事だってことを忘れるくらいに楽しかったです。ありがとうございました」
『帰り道、気をつけてね。好きな人にちゃんと気持ち伝えるんだよ』
「はい。……これから彼に会いに行ってきます」
照れ臭そうにはにかむなぎさは幸せに見えた。幸せかそうじゃないかは自分で決めると言った彼女は、今幸せなのだろう。