早河シリーズ第六幕【砂時計】
阿部のチャーシュー麺と真紀のとんこつラーメンが目の前に置かれる。二人は箸をラーメンに伸ばした。
「警視が私に早河さんのことを聞いてきたのは、これから一緒に仕事をする早河さんがどんな人なのかを知りたかったからですか?」
『まぁな。武田大臣から話は聞いていたが、大臣が言うにはカオスを潰す切り札になるのは早河と、早河の助手をしている香道の妹のようだ』
「なぎさちゃんも切り札に?」
『クイーンの寺沢莉央に関しては香道の妹が誰よりも理解している、ということらしい。早河が協力関係を結ぶ価値のある男なのか、見極めたかった』
阿部はチャーシュー麺を勢いよくすすっている。この店のチャーシュー麺は原昌也が好んで食べていたものだが阿部はそんなことは知らない。
「武田大臣の命令で警視は動いていたんですね」
『大臣クラスでもないと、国家公安委員会と警察庁は動かせない』
真紀が警視庁の廊下で目撃した、阿部が敬語を使って電話をしていた相手は武田財務大臣だったのだろう。
『捜査本部は解散したがこれで終わりじゃない。看守の目を盗んで留置場にいる原に毒を渡した人間が警察内部にいる。原は毒を渡された時点でその意味を悟ったんだ。自分は組織に切り捨てられたと』
一般人が多くいるラーメン屋でラーメンを食べながら話す話題ではないものの、幸いにも賑やかな店内ではカウンターの隅にいる阿部と真紀の会話が周囲に聞こえる心配はない。
「警察内部にカオスと通じている人間を公安がマークしているみたいですね。公安の栗山警部補も何人か怪しい人間がいると言っていました」
『マークする人間が警視庁内部だけで済む話ならいいけどな。下手すれば各県警にまで捜査の手を広げないとならない』
「かなり大掛かりな捜査になりそうですね。まさか自分が属する組織の人間を疑うことになるなんて……」
真紀はラーメンを食べる手を休めて息をつく。阿部はチャーシュー麺を食べ終えていた。
『お前はいざという時、裏切った仲間に銃を向けられるか?』
「……わかりません。でも民間人や私の大切な人達を傷付けようとしている時には迷わず銃を向けます」
『それでいい。刑事にとっての銃は人を殺す道具じゃない。人を守る為にあるものだ』
口調や態度は乱暴で横柄な阿部だが、警察官としての志《こころざし》は尊敬できる。精悍な顔つきの彼が頼もしかった。
真紀が手洗いに立つ間に阿部は二人分の会計を済ませていた。
「あの、自分の分は自分で支払いますから……」
『いい。これくらいの金額を払ったところで俺の財布は寂しくならない』
阿部は黒いコートを羽織って白い歯を見せた。もしかするとこの男、かなりモテる質ではないだろうか。
「警視が私に早河さんのことを聞いてきたのは、これから一緒に仕事をする早河さんがどんな人なのかを知りたかったからですか?」
『まぁな。武田大臣から話は聞いていたが、大臣が言うにはカオスを潰す切り札になるのは早河と、早河の助手をしている香道の妹のようだ』
「なぎさちゃんも切り札に?」
『クイーンの寺沢莉央に関しては香道の妹が誰よりも理解している、ということらしい。早河が協力関係を結ぶ価値のある男なのか、見極めたかった』
阿部はチャーシュー麺を勢いよくすすっている。この店のチャーシュー麺は原昌也が好んで食べていたものだが阿部はそんなことは知らない。
「武田大臣の命令で警視は動いていたんですね」
『大臣クラスでもないと、国家公安委員会と警察庁は動かせない』
真紀が警視庁の廊下で目撃した、阿部が敬語を使って電話をしていた相手は武田財務大臣だったのだろう。
『捜査本部は解散したがこれで終わりじゃない。看守の目を盗んで留置場にいる原に毒を渡した人間が警察内部にいる。原は毒を渡された時点でその意味を悟ったんだ。自分は組織に切り捨てられたと』
一般人が多くいるラーメン屋でラーメンを食べながら話す話題ではないものの、幸いにも賑やかな店内ではカウンターの隅にいる阿部と真紀の会話が周囲に聞こえる心配はない。
「警察内部にカオスと通じている人間を公安がマークしているみたいですね。公安の栗山警部補も何人か怪しい人間がいると言っていました」
『マークする人間が警視庁内部だけで済む話ならいいけどな。下手すれば各県警にまで捜査の手を広げないとならない』
「かなり大掛かりな捜査になりそうですね。まさか自分が属する組織の人間を疑うことになるなんて……」
真紀はラーメンを食べる手を休めて息をつく。阿部はチャーシュー麺を食べ終えていた。
『お前はいざという時、裏切った仲間に銃を向けられるか?』
「……わかりません。でも民間人や私の大切な人達を傷付けようとしている時には迷わず銃を向けます」
『それでいい。刑事にとっての銃は人を殺す道具じゃない。人を守る為にあるものだ』
口調や態度は乱暴で横柄な阿部だが、警察官としての志《こころざし》は尊敬できる。精悍な顔つきの彼が頼もしかった。
真紀が手洗いに立つ間に阿部は二人分の会計を済ませていた。
「あの、自分の分は自分で支払いますから……」
『いい。これくらいの金額を払ったところで俺の財布は寂しくならない』
阿部は黒いコートを羽織って白い歯を見せた。もしかするとこの男、かなりモテる質ではないだろうか。