Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
聞き取り① 洞察力
東の都の城――地上階の下層は、警備兵の詰め所や文官のオフィスになっている。上層は、大臣などの幹部の部屋、アルデバラン王の謁見の間などがある。さて、その地下はというと……。
「アクラブ、詰問の時間だ」
ルクバトが一人の男を小さな部屋に連れて行き、いすに座らせた。
先の騒ぎで逮捕された赤星党の党員・アクラブ。巨漢で強面の猛者であり、爆弾を使って都を混乱に陥れた。
が、フォマルハウトとルクバトの連携プレーによりあっさりと撃退され、こうして城の地下にある牢屋に入れられているのである。
「いい加減白状しろ!! お前らの狙いは何だ!?」
「あー、どういったらいいかなあ。俺、頭悪いから分かんねえや」
アクラブはのらりくらりとかわす。ルクバトの激しい叱責を受けても何も動じない。ルクバトは扉をバン、と乱暴に開けて部屋を出た。ちょうどそこでフォマルハウトと出くわした。
「ルクバト、どうした?」
「フォマルハウト!! 聞いてくれよ!!」
いらだっていたルクバトが訴えてくる。赤星党のメンバーを捕まえたはいいが、なかなか口を割らない。
「まあ、あんたは戦士としては超一流だけど、こういう仕事は向いていないんじゃないか?」
ルクバトが固まる。確かに、戦闘の現場では遠距離戦も接近戦も強い。チームを組めば指揮官としても申し分ない働きをする。が、その後の事後処理などは得意ではなく、いつも部下にやらせている。
「ここは僕に任せてくれるか? 記者の強みを出してみるよ」
ドアは開けておくからルクバトはここで聞いていてくれと言い残し、アクラブのいる部屋に入った。
「やあ、気分はどうだい?」
「ああ? 最悪だぜ。せっかくの仕事が失敗して、おまけにこんな陰気くさいところにぶち込まれたんじゃあな」
あくびをしながら答えるアクラブ。緊張感が見られない。
「そういや腹減っていないか? 何か注文するよ?」
フォマルハウトは出前のメニュー表を見せた。すると、アクラブはメニューにある「鬼鰹揚げの丼」に反応した。
「おおっ、鬼鰹揚げの丼か。うまそうだな、滅多にお目にかかれないぜ。これにしよ…」
するとフォマルハウトの七星剣が鞭状に伸び、アクラブの右腕にシュルシュルっと一瞬で巻き付いた。
「おい、何のまね…」
「動くな」
フォマルハウトは鋭い声で言った。
「ここからは僕が尋問する。あんた、右手を失ったら二度と漁師をできなくなるぜ」
アクラブの顔が青くなる。右腕を拘束されたことにも驚いたが、自分の身の上を当ててきたのだ。
「なぜ俺が漁師だって分かった?」
「体から潮の匂いがする。それに恵まれた体格をしているよな。蟹の目町はメインの地場産業が漁業と船舶だ。どちらも力仕事だが、船乗りはけっこう実入りもいいし、星の大地のあちらこちらに行って、港でうまいものを食う。この鬼鰹の丼よりよっぽどうまいものをな。ということは、消去法であんたは漁師とふんだんだ」
正直なところ確証はなく、80%くらいの予想だった。が、見事当たった。
「…どうやらあんたの前では、隠し事はできねえな」
アクラブは冷や汗を流しながら答える。
「さっさと吐いてしまいな。町に残してきた母親のことも気になるんじゃないのか? 釈放されたら、帰って元気な顔を見せるといい」
「そんなことまで調べたのか!?」
「記者の洞察力と情報網をなめるなよ」
都の城の資料室で、住人名簿を探し出して家族構成を突き止めたのだ。アクラブは、年老いた母親と2人で暮らしている。
アクラブは「あんたにはかなわねえな」と、観念したかのようにぽつぽつと語り始めた――。
「アクラブ、詰問の時間だ」
ルクバトが一人の男を小さな部屋に連れて行き、いすに座らせた。
先の騒ぎで逮捕された赤星党の党員・アクラブ。巨漢で強面の猛者であり、爆弾を使って都を混乱に陥れた。
が、フォマルハウトとルクバトの連携プレーによりあっさりと撃退され、こうして城の地下にある牢屋に入れられているのである。
「いい加減白状しろ!! お前らの狙いは何だ!?」
「あー、どういったらいいかなあ。俺、頭悪いから分かんねえや」
アクラブはのらりくらりとかわす。ルクバトの激しい叱責を受けても何も動じない。ルクバトは扉をバン、と乱暴に開けて部屋を出た。ちょうどそこでフォマルハウトと出くわした。
「ルクバト、どうした?」
「フォマルハウト!! 聞いてくれよ!!」
いらだっていたルクバトが訴えてくる。赤星党のメンバーを捕まえたはいいが、なかなか口を割らない。
「まあ、あんたは戦士としては超一流だけど、こういう仕事は向いていないんじゃないか?」
ルクバトが固まる。確かに、戦闘の現場では遠距離戦も接近戦も強い。チームを組めば指揮官としても申し分ない働きをする。が、その後の事後処理などは得意ではなく、いつも部下にやらせている。
「ここは僕に任せてくれるか? 記者の強みを出してみるよ」
ドアは開けておくからルクバトはここで聞いていてくれと言い残し、アクラブのいる部屋に入った。
「やあ、気分はどうだい?」
「ああ? 最悪だぜ。せっかくの仕事が失敗して、おまけにこんな陰気くさいところにぶち込まれたんじゃあな」
あくびをしながら答えるアクラブ。緊張感が見られない。
「そういや腹減っていないか? 何か注文するよ?」
フォマルハウトは出前のメニュー表を見せた。すると、アクラブはメニューにある「鬼鰹揚げの丼」に反応した。
「おおっ、鬼鰹揚げの丼か。うまそうだな、滅多にお目にかかれないぜ。これにしよ…」
するとフォマルハウトの七星剣が鞭状に伸び、アクラブの右腕にシュルシュルっと一瞬で巻き付いた。
「おい、何のまね…」
「動くな」
フォマルハウトは鋭い声で言った。
「ここからは僕が尋問する。あんた、右手を失ったら二度と漁師をできなくなるぜ」
アクラブの顔が青くなる。右腕を拘束されたことにも驚いたが、自分の身の上を当ててきたのだ。
「なぜ俺が漁師だって分かった?」
「体から潮の匂いがする。それに恵まれた体格をしているよな。蟹の目町はメインの地場産業が漁業と船舶だ。どちらも力仕事だが、船乗りはけっこう実入りもいいし、星の大地のあちらこちらに行って、港でうまいものを食う。この鬼鰹の丼よりよっぽどうまいものをな。ということは、消去法であんたは漁師とふんだんだ」
正直なところ確証はなく、80%くらいの予想だった。が、見事当たった。
「…どうやらあんたの前では、隠し事はできねえな」
アクラブは冷や汗を流しながら答える。
「さっさと吐いてしまいな。町に残してきた母親のことも気になるんじゃないのか? 釈放されたら、帰って元気な顔を見せるといい」
「そんなことまで調べたのか!?」
「記者の洞察力と情報網をなめるなよ」
都の城の資料室で、住人名簿を探し出して家族構成を突き止めたのだ。アクラブは、年老いた母親と2人で暮らしている。
アクラブは「あんたにはかなわねえな」と、観念したかのようにぽつぽつと語り始めた――。