Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

五行の魔人②――火と水

 去って行ったマルケブと4人の魔人たち。連れ去られたアルセフィナを助けようと焦るが、まずは目の前にいる火の魔人を倒さなければならない。
 魔人は体長3mほどある肌の赤い大男で、体じゅうから炎を上げている。カノープス、ミモザ、ミアプラ、アヴィオールは七星剣を構え、一の秘剣・魚釣り星を繰り出した。バシッと攻撃をはじくものの、かすかにダメージは与えた。
 が、魔人もじっとはしていない。口から炎を吐き、両手からは竜巻状の炎を発射する。4人の候補生は何とかそれを避けるが、外れた炎が木々に燃え移って山火事のように燃え広がった。
「がああああああ!!」
 雄叫びをあげながら襲いかかってくる魔人。攻撃を避けながら、3人はまた魚釣り星や六の秘剣・釣り鐘星を繰り出す。敵は体じゅうが炎で包まれ、至近距離用の秘剣は使えない。
「どうしよう、カノープス」
 アヴィオールが不安そうに尋ねる。
「俺に聞くなよ!」
「どうにかしてよ! あんた、ミモザと同じくらい一番力強いじゃない!!」
 ミアプラも八つ当たり気味に怒鳴ってきた。ったく、修羅場を経験したことのない小娘が…と悪態の一つもつきたくなる。
 その時、ふとひらめいた。カノープスは海に足を入れて、七星剣を構える。膝を曲げて腰を落とすと、その姿勢から二の秘剣・螺旋昴を横向きに放った。
 すると、海水が螺旋状の剣戟にまとわりつき、魔人の体に降りかかった。魔人の体の炎はシュウウウウ、と音を立てて消えていく。
「やはりな、火だから水が弱点だ。ミモザ、こっちに来い! 手伝ってくれ!」
「あ、ああ」
 ミモザも浅瀬に飛び入り、カノープスと次々に螺旋昴を繰り出した。魔人の炎が完全に消えたのを見計らい、カノープスはミアプラに叫んだ。
「ミアプラ! 三連突きだ!」
 ミアプラは七星剣を手槍に変え、三の秘剣・三連突きを魔人の腰に見舞った。魔人は体を貫かれて倒れ、消滅した。
「やった!」
 魔人が倒れた場所を見ると、ビー玉ほどの小さな鏡の玉が二つ残っていた。色は赤で、炎のような模様が刻まれている。
「何だ、これ?」
 カノープスが拾い、しげしげと見つめた。何かに使えそうな気もするが、分からない。とりあえずポケットにしまい、先を急いだ。

 浅瀬道を進むと、次の魔人にでくわした。全身が青く、きれいな女性の姿をしている。服はまとわず、足元はパンプスのような靴を履いている。
 その魔人は、手から水を発射してきた。そばにあった岩にくぼみができる威力だ。
「水の魔人か」
 カノープスたちは七星剣を構えて攻撃する。が、なぜかすり抜けてしまった。まるで水を切るかのようだ。
「まさか、水だから物理攻撃が効かないのか!?」
 アヴィオールが叫ぶ。対して、魔人からの攻撃は次々に繰り出されてくる。
「そんな、反則だよ!」
「いちいちうるさいわよ、もう!!」
 ミアプラは騒ぐアヴィオールに怒鳴った。が、カノープスは七星剣を構え、魔人の上にあった岩をめがけて魚釣り星を放った。すると、砕けた岩が魔人に降り注ぎ、倒れ込んだ。
「あっ!」
 砂地に手をついた魔人は、体の水分を瞬く間に砂に取られて消滅した。
「こいつら…何かしら弱点があるな」
 火が水に、水が砂つまり土に弱い。自然の元素同士の相性を考えれば、魔人を倒せる! そう確信した。
 そして一行は、浅瀬道を抜けて東の都に入った。一行はすぐに天牢庵に戻る。カノープスは速く西の村に向けて出立したがったが、ミモザが止めた。
「もう夕焼けだ。今から出発したら闇夜を進むことになる。そうなったら敵の方が有利だぞ」
 これを言われ、カノープスもしぶしぶあきらめた。あの魔人たちは、連携はしないものの、個々の戦闘力が高い。その上に闇の中で戦うのは危険すぎる。
 そんなわけで今日は休み、出発は明朝ということになった。

 ミモザ、ミアプラ、アヴィオール、カペラの4人は、それぞれの部屋で眠りについた。が、カノープスだけは図書室で調べ事をしていた。
「五行、五行……あった」
 以前、関連する書物を読んだことがあったのだ。自然界の構成要素を火、水、木、金、土の五つに分け、互いの要素を活かしたり打ち克ったりする。
例えば、水は火を消し、火は金を溶かし、金は斧として木を切り倒し、木は土から養分を吸い上げ、土は水の流れをせき止めたり汚したりする。これは「相克」の関係と言われ、抑制する関係である。
 また、木は燃えることで火がよく燃え、火は燃え尽きると灰になって土となり、土の中には金属が生まれ、金属は表面に水滴を生み、水は木を生長させる。こちらは「相生」の関係と言われ、相手を活かす関係となる。
 この関係が、あの魔人たちそのものか、ということを突き止めた。
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