Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

深夜の襲撃

 草木が眠る丑三つ時とでもいうのか――深夜、北の町から戻った一行は深い眠りに落ちていた。ただ、ひと組の男女を除いては…。

「ミアプラ…」
「んっ、ミモザ…」
 2人は裸になり、ベッドで抱き合っていた。ミモザはミアプラを放っておけず、自分の部屋に行ってから彼女のもとに来たのだ。ミアプラは両親のことから目を背けるようにミモザとの逢瀬を重ねた。
 父親、生みの母、そして継母――複雑に絡み合う愛憎に巻き込まれてきた。もういやだ、あんな親たち。このままミモザと一つになって消えてしまいたい……。ミモザと舌がからみ合う度、たくましい胸に顔を寄せる度、そして彼と一つになる度……そんなことばかり考えている。その気持ちを、愛する人にぶつけてみた。
「ミモザ…2人でどこか遠くにいかない?」
「何言っているんだよ、ポラリスを取り返さないといけないだろ?」
「だけど…」
 そんなやりとりをしていた時、近くで突然、轟音が響いた。何だ!?

 資料を漁っていたカノープスは、音がした現場に行ってみた。天牢庵内部の廊下の一部が、壁ごと崩れている。そこに立っていたのは――。
「おふくろ!」
 魔剣・コラプサーを携えた母・マルケブだった。彼女は息子を一瞥するとにやっと笑い、コラプサーを一振りする。剣閃で廊下と壁が切り裂かれた。そうこうしているうちに、ミモザ、ミアプラ、アヴィオール、カペラが集まってきた。
「…西の村で待っているんじゃなかったのかよ、おふくろ」
 カノープスは敵意を剥き出しにしにらみつける。が、マルケブはヒュンッ、と姿を消したかと思うと、ミモザの背後に回った。
「!!」
 ミモザは七星剣を発動させようとした。が、マルケブの方が早い。コラプサーの束で当て身をくらわせ、気絶させたのだ。
「ミモザ!」
 ミアプラが叫んだ瞬間、マルケブとミモザの姿が消えた。再び現れたのは、崩れた壁の淵だ。
「この若い子、もらっていくわ」
「はあ!?」
「あの双子ちゃんがいなくなっちゃったから、手駒がいなくて不便なのよ」
 双子を自分で殺しておいて何言ってやがる!! カノープスは一の秘剣・魚釣り星を繰り出した。が、マルケブはそれをさっと避ける。
「この子って、紫微垣候補の筆頭だったわよね? 精神的には強いから双子ちゃんみたいにたぶらかせないと思うけど、強力な呪いで洗脳してみようと思うの」
 まるで世間話をするかのような軽い口調である。
「やめて! ミモザを連れていかないで!!」
 ミアプラが叫んだ。今の彼女にとって、唯一の心の支えなのだ。
「ふふっ、ミアプラちゃん、取り返してほしかったら西の村までおいで。だけどその前に…」
 マルケブは懐から黒い十字架を取り出した。暗黒十字だ!
「二つ目の十字架の呪いを置いていくからね」
 マルケブが暗黒十字をかざすと、辺りは闇に包まれた。

暗黒十字の闇にのまれた4人が目を開けると、そこは無数の蝋燭が燃える空間だった。上には黒い天井が広がっている。中央辺りには祭壇があり、供物のような肉料理がおいてあった。
「ここは…?」
 カペラが辺りを見回す。
「暗黒十字が誘った冥界よ」
 声がする方を見ると、そこには彼女の見覚えのある女性が立っていた。
「あなた…」
 カペラががたがたと震える。
「シャウラ!?」
 全員の顔色がさっと青くなった。シャウラって…フォマルハウトの前妻で、ミアプラの実の母親じゃないか!
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